先日、出身高校の同窓会に、本当に久しぶりにでかけました。
今をときめく時代小説作家・葉室麟さんや、今回作品を取り上げる帚木蓬生さんは、同窓です。
葉室さんは同学年のはずなのですが、失礼ながら在学中の記憶がないので、同級生の何人かにたずねると、入学後すぐ休学され、卒業が遅くなられたようだとの情報に納得しました。
帚木さんの方は、三年先輩ですが、私と同じ筑後小郡市のご出身。高校卒業後、東大の仏文科に入り、卒業後は会社勤務。ところが九大医学部に入りなおして、現在も精神科医として開業しながら、現在も毎年、違ったテーマで時代を照らす重要な作品を発表されている、すごい人です。
とてもとてもお二人の足元にも及ばない私たちですが、同窓会ではお二人のご活躍が話題となりました。
私は葉室さんについて「きっと直木賞を取る人だと思っていたよ」などと自慢。(本ホームページ別項をご覧下さい。
友人は、帚木さんが新田次郎賞を受賞した作品「水神」を絶賛し、私は「天に星 地に花」を褒めあげるといった具合。楽しい時代小説談議になりました。
その帚木蓬生さんの2014年刊行作品「天に星 地に花」の舞台は、江戸中期の筑後地方・久留米藩。私の故郷・現小郡市も含まれています。
御原郷井上村の大庄屋の次男・庄十郎は、父と一緒に、年貢や夫役の軽減を求めて一揆寸前となった百姓の大群を見る。しかし、民を思う家老、稲次因幡の働きで一揆は回避された。
時を経て、庄十郎は村に流行した天然痘に罹り、母も死去。冷たい兄の仕打ちに、追われるようにして村を出た庄十郎は、自分を治療してくれた医師、小林鎮水に弟子入りして医師をめざすことに。修行中、思いがけず、鎮水と庄十郎は、蟄居させられ病を得た家老・稲次因幡の治療にあたり最期をみとる。一人前の医師となった庄十郎のもとに届けられたのは、稲次からの手紙と掛け軸。亡き父が稲次の屋敷で見て話題となった「天に星 地に花 人に慈愛」の掛け軸だった。
再びわき上がる一揆の動き。責任を取らされ処刑される庄十郎の兄、一方、逃亡した妹婿の大庄屋、大石勘兵衛はその後・・・。
田植え唄や雨乞い、善導寺の鬼夜、私にも懐かしい宝満川や花立山などなど、筑後の風俗や風景を織り交ぜながら、人の命とは、生き様とは何かをテーマに物語は進みます。
当然ながら作中の会話は筑後弁。私には嬉しい限りですが、ほとんど正確なので、他の地方の読者には分かるのだろうかと、ちょっと気になってしまいました。
前掲の「水神」も同じ筑後平野が舞台。水をひくため筑後川をせき止める大工事「大石堰」の実現にかけた5人の大庄屋の史実に基づいた物語です。もちろんこちらもお勧めです。
集英社刊 (2015年11月)