平家

8otona.gif私は元来、平家が好きなんですね。
以前、永井路子さんの『波のかたみ』(中央公論社刊)を読んで、平家の側から歴史をながめると天下の大悪人のように描かれてきた平清盛が、時代を切り開いていく人物として素敵に描かれているのに感心したものです。

池宮さんの「平家」は清盛が、藤原官僚群や後白河上皇の権謀術数と闘う改革者として描かれています。  平成13年4月から日本経済新聞に連載された作品だけに、抵抗勢力と闘う改革者としての清盛像が強調されすぎているきらいを感じつつも、平家が躍進して滅びにいたる過程を、壮大なスケールと緻密な考証で描いていく池宮さんの筆力にひきずられて読み進みます。

「平家物語」は鎌倉期に原本が成立し「ゆえに、清盛の事績は悉く悪意を以て描かれた。史料史実とはそういうものである。」「滅亡した平家の象徴的存在である清盛は、その後、長く続いた源氏の時代に大悪として扱われた。我が国の歴史は、人物像を善と悪とにきめつける弊がある。」と池宮さんは述べています。

時の支配者に都合の良い姿に描かれた人物を、決めつけることなく、時代を開いた人物像として歴史の中で正確に位置づけようとするのは大変大事な仕事だと思います。

平家は海を支配する一族。太宰府を抑え、中国(宋)と貿易を行い、海の高速道路である瀬戸内海を抑え活用することで、力を蓄えていきました。  もし、東国の源氏にたまたま負けてしまわず、勝ち残っていたら、今頃は大阪か神戸が日本の首都で、国際的にも開けた貿易国として大いに世界を驚かせていたかも知れない、などと考えるとワクワクしませんか。

歴史を学ぶ高校生などには「平家の滅亡は1185年、鎌倉幕府成立は1192年」などと機械的にテストするより、こんな歴史小説を一冊読むという宿題を課した方が何倍も役に立つのにと思ったりするのです。

■出版社:角川書店

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