著者の山本直純さんは2002年6月18日に亡くなりました。
「大きいことは良いことだ!」のCMで全国に知られるようになった作曲家・指揮者の山本さんは、トレードマークのヒゲと大げさともいえる身振り手振りで一躍お茶の間の人気者となりました。
テレビで「オーケストラがやって来た」という番組を長年つづけてこられたのを、私も知っていました。でも私は、どこかあの大げさなジェスチャーに違和感を覚えて「あまり感心しないよ」という目で山本直純さんという音楽家を見ていたような気がします。
でもそれは誤解だったのかもしれない。この本を読んで強く思いました。
山本直純さんという人は、もちろん天性の明るさとエネルギッシュな行動で人々を音楽に、オーケストラに引きつけ続けたのでしょうが、彼はあえて意識して人々にクラシック音楽を親しんでもらうための努力をもつづけてきたのですね。
本の前文で、いまや世界的指揮者となった小澤征爾氏が同じ斉藤秀男先生の兄弟子である山本直純さんから「音楽のピラミッドがあるとしたら、オレはその底辺を広げる仕事をするから、お前はヨーロッパへ行って頂点をめざせ。」といわれたと述べています。この本も、そういう仕事の一つ。
第二章コンサートホールへの招待という章では、チケットの買い方から席の座り方まで楽しく述べてくれています。出会った指揮者たちとのエピソードや、名曲との出会い、そして奥さんとの出会いまで。
小澤征爾指揮のウイーンフィルのニューイヤーコンサートなどはとても有名になりましたが、まだまだクラシックの世界はどこか遠い世界のような感じがある人も多いかと思います。
山本直純さんはもうこの世にいないけれど、この本を読めばきっと肩の力をぬいてコンサートにでも出かけてみようかという気になれること請け合いです。