図書館問題研究の全国大会が福岡県で開催され、その中で学校図書館を考える分科会が開かれるというので世良俊明も参加して学習してきました。
同分科会では、現地の杷木中学校の協力で朝の読書活動と学校図書館事情を視察(ブログでもご報告)した他、島根県や小郡市など各地の学校図書館充実活動の経験交流などが行われました。
以下、世良俊明の報告です。
「 *レベルの高い小郡市の図書館システム*
学校図書館の課題をさぐる研究会は大変勉強になりました。
発表された活動事例の中でも、私の出身地・福岡県小郡市の取り組みはすばらしいものでしたね。
そこでは学校図書館のデータベースと地域公共図書館のデータベースを一体化し情報を共有化、どこの図書も貸し借りができるほか、子どもたちが公共図書館を利用することにつなげていくなどの工夫もなされていました。
全学校の学校図書館には各一名の学校司書(ほぼ全員が嘱託)が配置されているほか、公共図書館側には学校図書館支援センターを設置、学校での総合学習教科学習を支援する機能が確立されていました。
シルバー人材センターに委託している連絡巡回車が週2回、市立図書館と学校、市役所、図書返却ポストを往復する物流システムがこれらを連携させています。このほかに2週間に1回の移動図書館車の巡回サービスも実施しているという充実ぶりです。
公共図書館と学校司書、担当教諭もふくめた合同研修など人的交流もすすめており、現状では自治体で望むことのできる最も高いレベルのシステムではないかと感じました。
*明らかになったいくつかの課題*
全国各地からの発表や経験交流などを通じて、学校図書館の直面している主な課題が明らかになったと思っています。
第一に、学校図書館充実の要はやはり学校図書司書など関係人材の確保だという点です。学校図書館は開いていなければ活用できない。また忙しい司書教諭だけに頼ることもできない。学校図書館充実のためには司書職員の配置が欠かせない。しかし、財政難に直面する各自治体でその身分待遇について多くの問題が生じている。
身分保障と併せて研修や経験の蓄積など、司書の質の向上についても課題があること。
第二に、従来の読書センター機能に加えて、学習支援機能・情報機能など時代の要請に対応する学校図書館の新しい役割について、いまだ充分意識できていない、応えきれていない課題があること。
具体的には、たとえば物流機能の充実や児童図書の全点購入などの体制整備が、新しい機能を果たす上で必要不可欠のものとして認識が進んでいないなどは、その証左だろう。
第三に、学校図書館法など改正の背景にある問題意識を共有した地域のコンセンサスづくりに課題があること。
学校図書館や公共図書館が、家庭や地域の読書力・教育力を高めるために不可欠であり、就学前(幼稚園・保育園との連携)や卒業後(高校・社会人との連携)を含んだ総合的な文化活動として意識されなければならない課題があること。などだろうと考えます。
今後、明らかになった課題ごとに、自らの地域の検証も含めて学校図書館充実への道筋を探って生きたいと考えます。良い学習の機会を与えて下さった図書館関係の皆様に感謝申し上げます。」