あなたは小さい頃、ご両親(あるいはおばあちゃん?)などに本を読んでもらいながら時間をすごしたことがおありですか?
もしそうした時間をお過ごしなら、すばらしいことですね。きっと思い出すだけでも幸せな気分になれるのではないでしょうか。
読んでもらったのはどんな本でしたか?
そんな子どもたちが、もっと読んでといいながら、いつも眠ってしまって、翌日にはつづきを読んでとせがむ、そんな光景にふさわしい本ってどんな本でしょう?
今日ご紹介する作品は、そんな時にもってこいの本だと思います。
はるかな昔、光り輝く銅の山々に囲まれて銅のお城がありました。お城には年老いたマンソレイン王が住んでいました。王のあごひげはすばらしく、広がったひげの上では、今ではただ一匹仕えているノウサギが眠っています。
千年もの間、国じゅうの生き物を治めていた王は、明日をも知れぬ重い心臓病を患っており、王の命を救えるのは「ネジマキ草」という薬草だけ。心配するノウサギに、まじない師はネジマキ草を見つける間、王の心臓のねじを毎日巻きなおして命をつなぐのは、胸をわくわくさせる物語だけなのだと言い残して何日もの旅に出ます。
まじない師が旅に出た後、心臓を患う王様の銅のお城には、オオカミやリス、カモやライオンなどが次々にやってきて、昔の闘いや冒険の物語を語り続けます。まじない師はネジマキ草を見つけて無事に帰ってくることができるでしょうか。
オランダを代表する児童文学作家パウル・ビーヘルがこの作品を発表したのは1964年のこと。「枠物語」と言われる形式を使いこなし、不朽の名作として受け継がれてきたこの作品を、コロボックルシリーズで知られる村上勉さんの挿絵で2012年に福音館が新たに刊行しました。
かつてあなたが経験した幸せな時間を、この作品を通して、ぜひ今の子どもたちやお孫さんに受け継いであげて下さいね。
著者 パウル・ビーヘル 訳者 野坂悦子 福音館書店