「ぐるぐる猿と歌う鳥」 加納朋子 

社宅はミステリー!かつて北九州市内、特に八幡製鉄所のあった地区には、ずらりと関係企業の社宅がならんでいました。 

物語は、わが北九州市八幡のとある大きな社宅群が舞台。東京から会社の転勤でやってきた小学五年生のシンは、そこで不思議な野生児パックや、まるで女の子のようなか弱いココちゃん、北九州弁まるだしの美少女あや、ジャガイモ3兄弟などに出会って意気投合。高いところに登ると見えるという社宅の不思議な屋根絵を探したり、卑怯な告げ口で飛ばされる同級生・勝の父親の敵討ちとして、空き家を利用して「お偉いさん」を脅かしたり、学校や社宅でパックらと一緒に大活躍。

パックはなぜか空いた社宅を根城に暮らす自由児であり、ココちゃんは、じつはDVから逃れていたシンの幼なじみのあの「女の子」だった。 

北九州市の「社宅」を舞台に、不思議な少年を囲む子どもたちの集団と別れ、ココちゃんにまつわる「懐かしい思い出」の謎解きなど、シンを主人公に、テンポ良く描きます。

 

社宅に限らずかつて子どもたちは、どこにでも沢山いて、毎日集団になって元気に遊んでいたものです。

子どもたちの集団は、お兄ちゃんからちびっ子まで含めてタテの関係があり、ちびっ子はその中で対人関係を教わったりする重要な機能を果たしていました。学問上でもその集団を「ギャング集団」と呼ぶのだそうです。

残念ながら、今ではそのギャング集団は見られなくなり、子どもたちの孤立や対人関係の弱さが指摘されています。もっと年齢を超えた子どもたちの集団の意義を考え直していく必要があるのではないでしょうか。 

 

本書は、ちょっと大人に近づいたと思いはじめる小学校5,6年生から読める作品だと思います。

著者の、加納朋子さんは北九州市出身。きっと社宅のギャング集団の中で遊んだ子どもの一人に違いありませんね。(講談社ノベルス・刊)


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