食欲は生きていく力ですから、こどもたちには本来食欲が備わっています。だから、食べ物のにおいにも敏感ですね。
さっちゃんはおおいそぎであさごはん。くちのまわりはたまごのきみでくわんくわん。 てのひらはいちごジャムでべたべた。エプロンはとりのスープでしみだらけ。そんなことはきにしないで のはらにむかってとびだしていきました。 きつねのこがはなをひくひくさせて「ふんふんなんだかいいにおいがするよ」そこへさっちゃんがやってきす。「とまれ!おまえはめだまやきだな」
ここまでくると聞いてる子はニコニコっとします。つぎのくまのこは「おまえはいちごジャムだな」、おおかみの子は「おまえはとりのスープだな」、せりふがおかしいのですね。
野原でお花をとってきた さっちゃんは おかあさんにプレゼント。だっこされたさっちゃんをみて、動物の子どもたちはつぎつぎにおうちに帰りますが、おおかみの子は泣き出します。「おれの かあさん いないよー」 さっちゃんはいいます。「あたしのおかあさん かしてあげるから だっこしてもらったら」 おかあさんは「さあいらっしゃい」とやさくしだっこ。元気になったおおかみの子は帰っていきます。
「あたし ともだちがいっぱいふえたみたい」とさっちゃん。おかあさんは「あたしも こどもが ひとり ふえたみたい」。
西巻さんの表情豊かな絵と文で、子どもたちは、たまごやジャムの匂いをかぎ、おかあさんに包まれる姿を想います。そして、ここでのおかあさんは友だちもだっこしてくれる豊かな愛の存在です。 読んでもらっている間に、子どもたちはそれを再確認する作業をおこなうのではないでしょうか。
うちの娘たちも読んでもらうのが大好きな本の一つでした。 この絵本は西巻かやこさんの20年をこえるロングセラーの一冊ですが、西巻さんには40年をこえるロングセラー「わたしのワンピース」という絵本もあります。
うさぎの女の子が真っ白なきれでワンピースをつくります。お花畑を散歩するとワンピースは花もようになり、雨が降ると水玉模様、小鳥や虹のもようにつぎつぎと変わっていきます。
読んであげる大人が「あれっ、ワンピースがはなもようになった」と驚いてみせると子どもたちは目を輝かせますね。ちょっと楽しいファンタジーの世界に入るのです。
かつて保育園の先生にその本をいただいた娘たちは大事にして、これまた何回も読んでもらっていました。
■出版社:こぐま社