『蜩ノ記』で第146回直木賞を受賞された作家・葉室麟さんのトークライブが行われました。
葉室さんは、北九州市のご出身なので、いずれ北九州市においでになることがあるだろうと思っていました。ご案内をいただき、ちょうど時間がとれたので覗かせていただきました。(僭越ながら、葉室さんのご本は、本ホームページでも「ご本ですよ」のコーナーで「秋月記」をご紹介させていただいています。)
お話では、小学校5年生まで小倉で育ち、当時の小倉が福岡市などとずいぶん違っていたこと。その時代が自分の原風景のようなものであり、また大学生の時は俳句を勉強し、それが穴井太さんの主宰する戸畑の天藾通信であったこと。またそこで紹介されて運命の出会いとなった上野英信さんを訪ねたことなど、自分の作家としての人生の要素が北九州市と大きく関わりあっているのだと感じると語っておられました。
また「歴史を小説で楽しむことができるようになったのは、実は戦後のことで、海音寺潮五郎さんころからのこと。それまでは歴史を語ることができなかった。」というご指摘は興味深い点でした。
氏は50歳になった時、自分の残り時間を、あと10年、20年あるだろうかと考え、歴史時代小説を書き始めたそうです。
書き続けるうちに「時間は長くなりはしないが豊穣にはなっていく。受賞作の主人公も命の時間を10年と区切られている。しかしそれでも生の深まりは得られるのではないかと思い物語を紡いだ」と、振り返っておられます。
氏の作品はどれも誠実・静謐で気負いがありません。直木賞の審査にあたった伊集院静氏も「若い作家ではこうはいかない。葉室氏の作品を読んでいると静かな水のほとりに立っているような錯覚にとらわれる時がある。」と評しています。年をとるのも、それなりに悪くない!
実は、葉室さんとはどうやら高校の同学年。同じ時に同じ学校にいたのです。しかし残念ながら、本名を聞いても思い浮かびません。今日は時間もなかったため、個人的にお話できませんでしたが、いずれまた機会があれば高校時代にどのようにお過ごしだったのかなどお聞きしてみたいものです。
このトークライブは、北九州市立文学館開館6周年記念事業として行われました。話題の直木賞作家登場とあって、さすがに会場は満員でした。聞き手は今川英子文学館館長でした。(写真は、トークライブの模様ですが、室内のため少々見にくいですね。ごめんなさい。)