この本の中の「白いぼうし」という一編が小学校の教科書に採用されているそうですので、おなじみの方も多いのかも知れません。
空いろのぴかぴかのタクシーの運転手・松井五郎さんが出会うちょっと不思議なできごと。 (おやっ、あの人、きつねじゃないかしら、くまじゃないかしら…。それとも…。)そんなことをかんがえたことはありませんか? こんなまえがきからお話ははじまります。
明るくておしゃれなあまんさんの作品は、どれも心地よくファンタジーの世界へ子どもたちを連れて行ってくれます。小さいとき、今日は家族の誰から本を読んでもらおうかと渡り歩いていたという、あまんさん。どの作品からも、物語を楽しむよろこびが伝わってくるようです。あまんさんの作品を、子どもたちが大好きな訳が分かるような気がします。
松谷みよ子さんは、あまんさんの作品を「ああ、これはいやしの文学だ」と書いておられます。「とてもつらい思いをかかえている現代の子どもたち。」が「この作品集を読み終わったとき、その思いがいやされるのではないか。」と。
この本は、あまんさんの最初のご本だとお聞きしています。あまんさんは、私の母・絹子とも親交をもっていただいていた方です。
蛇足ですが、実は私たち夫婦は、結婚のお祝いにと、あまんさんからティーカップをいただいたのです。チューリップの形をした真っ白なすてきなカップで「あまんさんらしいカップだね」と私たちはよろこんで使わせていただきました。もう30年近くも前の話、あまんさんご自身も覚えておいでではないかも知れませんね。
北田卓史さんの楽しい絵も「北田さんはきっと松井さんにそっくりのはずだ」と思ってしまうほど、すっかりこの作品に定着してしまった感があります。 小学校中学年ぐらいから。