電子カルテ導入の効用は?

視察2日目は、富山市のお隣、黒部市の市民病院を訪れました。黒部市は人口4万人あまりの小さな町。その市民病院というので小さな病院だと思ったら、ところがどうして、わが市立八幡病院に匹敵する405床、年間患者数は入院・外来のべ39万人、病床利用率はわが市立病院群より10%も高い91.8%(19年度4月現在)という大きな総合病院でした。富山県東部地域の中心的病院なのですね。
北九州の市立病院群に導入しようとしている「電子カルテ」の実例を勉強しようと訪れた我々を、新居院長先生や中陣看護部長、松井事務局長さん以下、幹部がずらっとそろって説明をしてくださいました。
電子カルテの導入効果については、最初のご説明では「導入費用は約9億6千万円、これにランニングコストが年間8千万円以上かかるものの、診察にかかる時間の短縮・二重投薬などミスが少なくなった・各種書類の発行が容易になった・地域診療の連携が強化された・材料費等が削減されたなどの効果があった」とその導入効果を強調されました。
ところが懇談の中では次第に本音が出されてきて「財政的効果を望むとすれば、あまり期待しない方が良い」とのお話や、医師の入力による煩雑さが負担となっていることなどの実態が率直に示されました。一方、看護部長さんからは「医師のカルテ入力がリアルタイムで、しかも日本語で患者さんにも目の前でわかるように行われることなど電子カルテ導入は大変意義あることだと私たちは思っています。」とのお話もいただきました。
つまるところ、電子カルテ導入は「財政効果への過剰な期待はできないけれど、患者さんとの診療情報の共有や地域での活用、安全性の向上といった面では十分に導入を検討する価値があるようだ」というのが私の感想です。
そのほか、同病院は富山大学医学部との連携のほか、アメリカの先端医療研修派遣制度などが効果を発揮しており「医師不足は感じていない」というのは大変興味深い点でした。頭の痛い医師の確保策についても、まだまだ検討の余地がありそうです。

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