小学生だった夏休みのある日の午後、私は校庭に面した渡り廊下のすみに座り込んでいました。
筑後平野の真ん中の学校でしたから、むこうの田んぼから渡ってくる風や、雨の上がった後の土の匂い、ひんやりとした木の廊下の肌触りなどを感じながら、遠くの山の上にもくもくと湧き上がる雲の動きを一人でぼんやりと眺めていたのでした。
ボーッと空想にふけっていたその一時は何と心地よかったことでしょう!
それはきっと私の「ぼくがつ ぼくにち ぼくようび」だったのに違いありません。(今の子どもたちが、ゲームや塾に追われて、こんな一時を持つことが許されないとすれば、それはとても不幸なことですね。)
今回ご紹介する本の著者・荒井さんは、活躍中の絵本作家でイラストレーター。この作品は、平凡社PR誌の表紙に描いたイラストに文をつけたものを再構成したのだそうです。
「晴れた空にむけて、アーッと口を大きくあけると太陽のつぶつぶが口からコロンコロンとはいってきて、なんとなく心のバイキンがシュンとなって小さくなる気がしていいぞォ!!…」
本を開いてファンタジックな絵を眺めながら読み進んでいると、どこか懐かしくもある「ぼくがつ ぼくにち ぼくようび」の世界が次々に広がっていきます。
「毎日に余裕がなくて追いつめられていると感じている特に中高生諸君!ちょっとこの本を開いて読んでみてごらん。きっと心の中に『ぼくがつ ぼくにち ぼくようび』の世界が広がって、ホッと楽になると思うよ」こう、彼らに勧めてあげたい一冊です。もちろん大人の方もぜひどうぞ。
平凡社・刊