今回の子どもの本は、長谷川町子さんの評伝について取り上げます。
「サザエさん」は、ギネス記録となるくらい永年テレビアニメとして現在まで放映されているので、日本人で知らない人はいないといわれるほどの国民的人気マンガです。
でも、1946年にスタートした新聞連載の4コマ漫画「サザエさん」が6477回もの連載を終えたのは1974年のことですから、現在の中高生の皆さんは、4コマ漫画のサザエさんを見たことがないはずですね。
サザエさんでは、長谷川町子さんが疎開先の福岡(現在の早良区西新あたり)に母と三姉妹ですんでいたころ、毎日のように海岸を散歩していたため、登場人物がすべて海にちなんだ名前になったのだそうです。(実は私も、サザエさんが登場した10年ぐらい後の百地海岸の風景を知っておりまして、のんびり散歩する長谷川町子さんの姿が目に浮かぶようです。)
この本では、こうしたサザエさん登場のいきさつや、女性で初めてプロの漫画家となった長谷川町子さんのその後の活躍ぶり、大胆不敵な行動家の母・貞子さんなど家族の奮闘など、成功ばかりではなく、失敗も苦悩もある人気漫画家の評伝として、誰にも分かりやすく描かれています。
中高生の皆さん、この評伝シリーズでは、<アップルをつくった天才>スティーブ・ジョブスや、<ドラえもんの生みの親>藤子・F・不二雄さんをはじめ、みなさんの良く知っている人たちも数多く登場します。書店などでぜひ一度手にとって目を通してみませんか。
蛇足ながら、
先日、市議会で準備中の「子ども読書活動推進条例」案について意見交換をしていたところ、中高生など向きの図書の呼び方について、若い議員仲間から「ヤングアダルトっていう呼び方には、違和感があります」との声があがりました。「アダルト」の語感が、どこか卑猥な響きに受け止められるようでした。
確かに、現実の読書活動では工夫も必要なのかも知れませんね。
ただ、公共図書館等の児童サービスを語る時、特に項目を設けて「ヤングアダルトサービス」について検討しなければならないほど、中高生の読書ばなれが深刻だと懸念されています。
子どもたちの年齢が上がるにつれて読書離れが強まるのは、どこに問題があるのでしょう。家庭や学校での環境の変化?ゲームの広がりなどデジタル化の影響なのでしょうか。
中高生向けの書籍が意外に少ないというのも原因の一つかもしれません。
そんな中で、中高生向けに近現代の伝記シリーズとして発売されたのが「ちくま評伝シリーズ<ポルトレ>」です。
「美辞麗句だけではない、人物の内面に一歩踏み込んだ中高生向きの内容に。人物から時代背景や文化を学ぶ「調べ学習」にも使えるように。また、「キャリア教育」としても有効なものに。読書の入り口になるよう、造本にもこだわりを。(ポルトレ編集長)」と大変意欲的です。ぜひ成功を期待したいと思います。