変化しつつある日中関係

北九州市議会の第16次訪中団のメンバーとして中国三市(上海市・北京市・大連市)を訪問した際に確認できたことの一つは、尖閣問題以降ぎくしゃくしてきた日中関係にようやく変化の兆しがみえるという点でした。

中国中央政府の動向に最も関心を払っている北京市の木寺昌人在中国日本全権大使は「日中間の関係については今年4月ごろから対話の機運がでてきた。秋になると、経済も青少年交流も地方間交流もやろうというメッセージが強く出されてきた。エイペックでの首脳会談をめぐって、その後も対話は進んでいる。大使館も一丸となって首脳会談実現へ頑張っている。

すでに中国に進出する日本企業は2300社、雇用も1000万人を超えているという現実があり、日本企業は中国社会にも貢献している。日中関係は誠に幅広いし、重たいのだ。こうした中で、北九州市による地方相互での友好交流は大変ありがたく感謝したい。ぜひ大連市とパートナーとして良い関係を作っていただきたい。」と期待を込めて述べられました。

またクレア北京事務所の寺崎所長も「これまで日本からも来ないでほしいとしていたのが、去年の9月以降、解禁され、地方間交流等はどんどんやれとなってきた。つい先日も北京で6県知事交流も開催され大いに盛り上がった。中国にとっても対中国感情が悪化して日本国全体で嫌いとなるのは避けたいのだ。」と述べ、中国の対日姿勢が変化し始めていることを確認されました。

ただ一方で、中国での「汚職と公費乱用防止」に向けた取り組みは、「蠅も虎も叩く」と言われるように大変厳しく、地方政府と言えども「宴会の費用はもとより、海外旅費などにも厳しい目が向けられているのが実情だ。日本からは来ることができても、日本への渡航が難しいという現実も理解してあげる必要があるだろう。」とも指摘されました。

さらに一日目の上海市での夕食でご一緒していただいた安川OBで上海福岡県人会会長・日中地域交流会顧問の谷本武司氏も「日中間の取引はざっと世界の三分の一に達しており、切っても切れない関係であるのに、日本のメディアの在り方は気になる。まるで対立を煽っているかのようだ。上海だけでも日本人は10万人を超えている。中国の人々の意識も一様ではなく、上海のような沿岸部と内陸部でも全く違うことなど理解することが必要だ。中国に出てくる企業も数多いが、少なくとも中国が嫌いでない人にきてほしいものだ。」と述べられ、日本での一般的な報道と違う、正しい中国の現状への理解の必要性を強調されました。

日本を訪れる中国人が年々最大数を更新しながら増え続けている現実を見れば、中央政府とは異なり、国民レベルでは対立の根は決して深くないはずであり、地域間都市間交流は一層強化する必要がある。

また、日中政府間が徒に事を荒立てて対立することは決して両国の利益にはつながらない、中国が対日戦略を転換する姿勢を打ち出しているこの時、日本政府は心して呼応すべきなのではないかというのが、訪中期間中に私たちが出会った日中関係者の大方のご意見であったと感じました。

11月5日から、北京市で始まったアジア太平洋経済協力会議(エイペック)の期間中に「日中首脳会談」は開催できるのでしょうか。双方の努力による実現に期待したいものです。

今回の訪中では、35年間にわたり強い絆を結んできた大連市と北九州市両市間の幅広い分野での一層の交流の成果を確認するとともに、こうした地域間交流の深化を通じて、日中間の友好協力関係の復元にもさらに貢献したいものだと念じながら、1週間の旅程を終え、大連空港から北九州への帰途につきました。

訪中団を支えて下さった関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。

写真は、上海市政治協商会議との会談のもよう。北京市天安門広場。 


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