清田前市議に有罪判決、でも…。

器物損壊・威力業務妨害に問われて裁判を続けてきた清田眞前市議にたいする判決公判が開かれ、福岡地裁小倉支部田口裁判長は清田被告に対し「現職の市議でありながら、嫌がらせを指示し暴力団関係者を使って実行させた悪質な犯行だ。」として「懲役2年8月、執行猶予5年」の判決を下しました。被告人側は控訴せずの方針とみられ、刑は確定することになりそうです。
「清田はテニスコートへの工事妨害などを指示したことはなく、スポーツ施設会社営業所長に同調したにすぎない」との弁護側の主張に対し、裁判長は「被告が犯行を指示したことは、関係者の証言で符合しており信用できる。」と検察側証人の供述のみを信用して判決を下しました。
公判をずっと傍聴してきた私は「利権の消失をおそれて事件を指示した清田こそが首謀者だ」という今回の裁判所の認定は、予想されたこととはいえやっぱり少々乱暴だと思わないわけにはいきません。
もし検察側証人の供述証拠だけで、被告が密室でしゃべっただろうことを「指示」だとして、議会開会中にいきなり議員を逮捕し有罪に持ち込めるのなら、利害関係者の讒言がありさえすれば誰だって議員を陥れることが出来るということにならないでしょうか。
もちろん清田被告が、談合の実態を知りながら業者との癒着して多額の金品を受領したことや、ある別のトラブルを暴力団を使って解決しようとした事などは市議の職責に反し市民を裏切るもので、断じて許されることではありません。
しかし、今回の事件で清田被告が懲役と議員辞職に値する有罪だとするなら、単に嫌がらせを「口頭で指示した」(かもしれない)というだけではなく、談合の実態と金品の授受や暴力団とのつながりにおいても清田被告の違法行為を解明立証して起訴した上で量刑し有罪とすべきだったのでないでしょうか。
裁判は、これだけの罪を犯せばこれだけの量刑となるという罪刑法定主義が大原則です。でなければ市民社会において法的安定性は保てません。
誤解がないように繰り返しますが、業界との癒着状態に陥り金銭感覚が麻痺していた清田被告の責任は免れません。しかし、業界ぐるみの談合体質とセットだというのならば、そこで行われていた談合構造を解明し清田被告の違法行為を立証して起訴すべきだったし、暴力団との関係も同様に違法性を立証すべきだったのに、検察も裁判所も結局は「世論が認める有罪ストーリー」を描いてみせただけで今回の公判を終わらせてしまったのではないかという気がしてしまうのです。
これから裁判員制度がはじまります。国民の誰もが人を裁く場に置かれる可能性があります。範を示すべき裁判所が大衆迎合に走ってしまったとしたら、どうして国民が信頼される裁判を行えると言うのでしょうか。
許されざる同僚議員の行為と警察の捜査、裁判のあり方など、色々な意味で心傷む事件でした。

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