今回ご紹介するのは、みずかみさやかさんの個人詩集。昨年末に出版されたばかりです。
「ジュニアポエムシリーズ」ということで「子どもにわかる言葉で真実の世界を歌う個人詩集のシリーズ」と題されています。
著者のみずかみさやかさんは、北九州市ゆかりの詩人・故みずかみかずよさんの娘さん。
みずかみかずよさんは、北九州市の児童文学同人誌「小さい旗」を中心に活躍され、現代児童文学のなかで、少年詩というジャンルを世に広められた功績者で、その作品は教科書などにも掲載され、今も多くの子どもたちに親しまれています。
子どもたちにわかりやすい言葉で詩を創り、作品の力で文学的魂を伝えていくことは大変むつかしい作業だと思います。
「子どもと詩」については、フランス文学者の鹿島茂さんが編著書『あの頃、あの詩を』(文春新書2007年)の中で指摘されたように、『暗い15年戦争の時期を間に挟んだ、明るく希望にあふれる二つの奇跡的な時代に生きた親と子の世代が、そうとは意識しないで共同で作り上げた「タイムカプセル」』としての「感動の詩の時代」もありました。(私もその恩恵を受けた一人でもあります。)
また、かつて竹中郁さんらが大阪を中心に永年続けられた「雑誌きりん」のように、子どもたちが自身が詩を書き、作品化することで、文学的価値を創り出す活動もありました。
いずれも難しいけれど、子どもたちの心の底に、「詩」という形式を通して文学的魂をはぐくむ活動は、これからも数々の試みがなされていくことでしょう。
みずかみさやかさんの本作品で、その試みがどう成功しているかについては、ぜひどうぞお手に取っていただくことをお勧めいたします。
私自身は、本作品が「亡き父と母に捧げます」とされているように、大好きな父平吉さんや母かずよさんとの心の交流を表現した作品に感銘を受けました。
何気ない暮らしの思い出の中に、暖かく描かれたご両親への思いは、きっと今の子どもたちの心にも滲み入るのではないかと思います。
おすすめは「小学校中学年以上」となっています。
(銀の鈴社刊)