中国進出ビジネスモデルの変容 

北九州市議会第16次友好訪中団副団長として中国を訪問した際に感じた点の一つが、中国に進出した日本企業のビジネスモデルが大きく変化しつつあるという点でした。

中国の安い人件費を使って大量生産して日本で利益を得るというビジネスモデルが、もはや用をなさなくなっているのです。

中国の人件費は年率10%もの勢いで上がり続け、急速な円安は中国で生産し日本に製品を持ってくるメリットを失わせてしまいました。こうした流れに対応できず中国に進出した企業で、日々苦闘している日本企業も少なくありません。

しかし、私たちが現地で見学した日本企業は、それらの変化に対応しながら、到って元気でした。

上海市で自動車部品を生産している住友電機有限公社(住友ベークライト㈱)の川上真弘副総経理は「中国では物価が高騰し、最低賃金が年率7%以上引き上げられるなどにより、原料を加工して、そのものを日本に戻すスキームではメリットが出ない。しかし、いまや中国での自動車生産は世界一であり、中国の市場が魅力的だ。昨今の円高の折、当社を日本に戻そうとは一切思っていない。

中国で製品を作り続け、中国で販売していくことが唯一の生き残りの道であり、 生き残って発展していく決意だ。」と、方向性は明確でした。

また、大連市の大連TOTOの新村弘一副総経理も同様に「当社は水洗金具を生産しているが、中国向けが75%を占めており、円安による業績悪化にはつながっていない。最近の為替変動に、進出企業が急に対応することは困難だが、当社は10年以上前から製品の半分以上は中国向けとしてきた。当社のターゲットマーケットゾーンは一番上の富裕層で、どんどん増えている。今後も生産を増やせる。」と強気でした。

大連市内で日本商品専門のドラッグストアを経営する大串政三郎さんも「商品は関税などで日本よりも高いが、日本製品は中国での信頼と安心があり、十分やっていける。すでに中国各地で店舗を展開しており、ここ大連市でも業績をのばす自信はある。」と語っておられました。

福岡銀行・小田大連支店も「大連市はものづくりの町であるため、日本企業がやってきた安い人件費で付加価値の低いものを大量生産し、日本で販売するという従来のやり方は、なりたたない。この転換ができていないところは厳しいが、付加価値が高いものを作って中国の人に売ることが重要だ。また、富裕層をターゲットにした医療ツーリズムなど新たな分野にも可能性が大いにある。」と指摘されていました。

さらに、中国での環境問題に対する意識が急速に高まっており、訪れた上海市協商会議との会談や上海市での見学、あるいは大連市人民代表大会との会談等でも、北九州市の蓄積した環境改善の技術や取り組みに対する関心も非常に高いことを確認できました。

木寺昌人駐中国全権大使は、北九州市による環境面での中国への貢献のあり方について、私の質問に「中国での大気汚染や公害、水など環境への関心は非常に高くなっており、北九州市の貢献は可能だと思う。だが中国は昔の中国ではない。北九州市におかれても、今後は慈善事業としてではなくビジネスで頑張っていかれることが良いと思う。」など、環境ビジネスの展開について可能性を示唆されました。

私たちが訪れた時の北京市の大気は予想外にきれいで、PM2.5の濃度も高くありませんでした。しかしこれはあくまで一時的なもの。数日前には建物の姿が確認できなかったほどだったそうです。

中国での環境問題は、水も大気も一層深刻度をますことは必至であり、北九州市に蓄積された環境技術・知見をどのようにビジネスとして展開できるか、北九州モデルとしてさらに検討することが求められているものと感じまし


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写真は、煙る上海市内。大連周水子空港の国際線ターミナル風景(多くの人々が日本などに出かけている。)



 

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