たぶん私が小学生の頃です。父母が岩波少年少女文学全集全30巻を購入し始めました。おそらくは仕事柄付き合いが深かった書店に勧められたのでしょう。毎月か隔月かは分かりませんが、父が緑と黄色でデザインされた本を持って帰るのです。なるほど全集というのは一遍にドサッと来るものではないのだということに感心した奇妙な思い出があります。
少年少女向けといってもどれも名作ばかり、本格的な読み物です。子どもには多少我慢のいる長い読み物ですが、ルビも振ってあり、面白くなると次々に読み進むことができます。
私は面白そうな巻を選んで読んでいきました。『エミールと探偵たち』『さすらいの孤児ラスムス』ケストナーやリンドグレーンの作品をはじめ、多くの作品に触れることができたことは大変幸せでした。それは私の初めての本格的な読書体験でもありました。
『ロビンフッドのゆかいな冒険』は、その中の一つ。全集では第2巻目。
今のアニメなどに出てくるおとぎ話のようなものではなくて、弓の名手のロビンが、はからずもお尋ね者になりシャーウッドの森に入って、郡長の圧制に苦しむ人々を助け数々の冒険と活躍を続けた後、最後にはリチャード王に召抱えられ、さらには毒殺されるまでがしっかり語られるのです。
痛快な活劇を目の前で見ているようにわくわくしながら読み進んだときの思いは、そこここが茶色くなったハードカバーを開けると今でも思い出すことができます。
著者のH.パイルが13世紀頃のイギリスに伝わるロビン・フッドの物語をまとめて書いたのはすでに120年以上も前のことです。世界中の子どもたちをわくわくさせながら活躍し親しまれてきたロビンフッド。幼児期低学年をすぎて、ちょっぴり大人っぽくなりかけた子どもたちに、これからも読み継がれてほしいものですね。