7月1日から「社会を明るくする運動」が全国で始まっているのをご存知でしょうか。
「すべての国民が,犯罪や非行の防止と犯罪や非行をした人たちの更生について理解を深め,それぞれの立場において力を合わせ,犯罪や非行のない安全で安心な明るい地域社会を築くための全国的な運動」で、法務省が音頭を取って地域自治体レベルで実行委員会を設置して毎年、啓発活動等を進めます。
旧犯罪者予防更生法の施行が昭和24年の7月であったことから、毎年7月を強化月間として啓発活動などに取り組んでいます。
今年はちょうど70回目という記念すべき節目の年なのですが、あいにく新型コロナウイルス感染症のため、恒例の集会や街頭での啓発活動ができないでいます。
こうした更生保護活動のうち、対象者に日常的に接しながら、二度と犯罪に手を染めないようにと自立更生を支援する役目を持つのが保護司です。不肖私も、平成7年に地域の先輩の推薦で拝命して以来、25年間続けています。(私の任命者は、当時の田沢智治法務大臣でしたが、この人は何らかの不祥事により、わずか60日余りで辞任してしまったと記憶しています。それでも今度の河井克行前法務大臣よりは長かったかな。)
保護司の活動は、法に基づくものではありますが、その性格上、表に出るものではないため、なかなか周囲に理解されない現状があります。
保護司の皆さんは、対象者と連絡を取って面接を実施すること自体が難しいケースや、更生の道を進んでいると思った対象者が再犯に走るケースなどに、悩んだり落ち込んだりしながらも粘り強く頑張っているのが実情です。報酬も、実費弁償金以外に特になく、誰もがボランティア精神を発揮しながら取り組んでいます。
先日、街中で「世良さん!」と声を掛けられたので、振り返ったら、私が担当したことのあるS君でした。
薬物や傷害などで服役した後、社会復帰したS君ですが、今は不動産の勉強をして資格を取るんだと張り切っているとのことでした。(こうした瞬間に出合えることは保護司冥利に尽きるというべきですが、実はこんな出来事は、長い活動歴でも数えるほどしかありません。)
日本の刑法犯認知件数は、平成14年をピークに減少し続け、戦後最少を更新していることは、近年よく知られるようになってきました。
かつて暴力団による発砲や、傷害事件などが発生し、街のイメージを大きく損ねることとなった北九州市でも、この間の全市を挙げた暴力追放運動や、安全安心のまちづくりの推進により、昨年の刑法犯認知件数はピーク時に比べて約84%もの大幅な減少となりました。
ただ、全国的には、検挙者に占める再犯者の割合が48.7%と半数近くに上っており、今後とも再犯防止の取り組みが重要であることも明らかになってきています。
これからも更生保護制度を時代の変化に合わせて有効に機能させ、犯罪の防止と、罪を犯した人々の更生自立支援を進めて行くことが求められています。
第70回目の「社会を明るくする運動」。どうぞこの機会に、保護司の活動をはじめ、世界に誇るべき独特の制度として機能してきた日本の更生保護制度に、格別のご理解をいただければ幸いです。