年に一度の「久女・多佳子の会」の総会が開かれました。そこで話題になったのは、久女・多佳子のゆかりの地・櫓山荘の復元の話でした。公園として整備された櫓山荘公園内に、あの洋館を復元し、記念館とするとともに市民に活用できないだろうかというもの。いい話ですねえ。
橋本多佳子の夫・豊次郎が建築した櫓山荘は、ここに高浜虚子が訪れて杉田久女と多佳子が出会うなど、近代女性俳句の源流をなした場所と言って良いと思います。数多くの文化人が訪れたほか、今では到津の森動物公園に引き継がれている子どものための林間学校も開催されるなど多彩な文化サロンとして機能していました。
前谷市長時代に老朽化を理由に取り壊されてしまったのですが、返す返すも惜しいことをしました。今残っていれば修復だけですんだものをねえ。(谷さん自体、政治的しがらみから杉田久女の復権に力を注ぐことはなかったと伝えられています。櫓山荘の取り壊しはそれとの関係があったのでしょうか。)
すでに市内有志のご努力によって設計図など復元に必要な図面は整っており、不可能なことではありません。
問題は、資金と世論の盛り上がりであり、これには全国の人々の支援なくしてはかないません。今後、どのような方法が可能なのか「大いに検討していきたいね」と話は盛り上がりました。
一方、この秋に開館予定の市文学館での杉田久女・橋本多佳子の扱いをお話ししたら、
「せっかくの文学館に二人がちゃんと取り上げられていないないなんて」と、皆さん大いにがっかりされていました。
「久女さんは国の宝」(田辺聖子さん)であることを未だに理解できない自称・文化人の仕打ちには、私も不快感を禁じ得ません。その才能と業績を不当に評価され、貶められてきた久女は、没後60年も経った今も不遇をかこち、その復権のためになお闘い続けなければならないとは、なんたることでしょう。