第一回林芙美子文学賞表彰式

本HPでもお知らせしておりました第一回林芙美子文学賞の表彰式が、同日からリニューアルオープンした林芙美子記念室がある門司港の旧門司三井倶楽部の1階で行われましたので出かけました。


芙美子表彰HP.jpg

表彰式には、大賞を受賞された井岡道子さん、佳作受賞の志馬さち子さん、高倉やえさんが参加されたほか、選考委員をつとめられた作家の井上荒野さん、角田光代さん、川上未映子さんも揃って来北されていました。

大賞を受賞した井岡さんは「これまで小説を書いてはいろんな文学賞に応募して落ちていました。

今回最終候補に残ったと聞いて、あの三人の先生方に読んでいただけるのかとそれだけで舞い上がっていました。それが大賞をいただけるとは。どんなに嬉しかったか、ご想像下さい。

この作品は、私は四国の山の奥の生まれで、そこであった話を書きました。あかるい農村の明るい楢山節考のような感じです。自分にとっても思いの強い作品ですので、この作品でこんな大きな賞を戴けたのは本当にうれしいです。これからも小説を書くことに立ち向かっていきたいです。」と受賞の喜びを語りました。

選考委員の講評では、まず井上荒野さんが「まず候補作を読んでびっくりしました。これまでも同様にプロでない人々の書いたものを読んできましたが、他に比べて各段にレベルが高く、これはまさに小説であり文学であると思います。


井上荒野さんHP.jpg

受賞作品は、どれも著者だけにしか書けないものだと思います。私たちが選びたかったのは、そうした著者の奥深いところから出てくるもので、今回の三作品はどれもそうした作品だと思います。」と講評されました。

また、角田光代さんは「第一回ということで正直期待していなくて、選考に臨んだら本当にびっくりしました。選考を忘れて楽しく読みました。

また他の新人賞では30代が多いのに、一番多かったのが60台だったのが面白いですね。割と年齢層が高め。読み比べるとやっぱり経験の重みが違う。それをいかに書くかをしっかりされていました。

これからの林芙美子文学賞の方向性を示していただいたのではないかと、私の方が感謝したい気がしています。」との講評でした。


角田光代さんHP.jpg

さらに、川上未映子さんは「私も、他の選考委員と同感で、本当にレベルが高いと感じました。共通しているのはディテールのたしかさ豊かさだと思います。

私は他の新人賞の選考委員もしていますが、今回読んでいて選考している目で見ず、つい楽しんで読んでしまって次第に小説を読んでいる感じになってきました。

これはどこから来るかと言えば、やはり著者の経験からくるのだと思いました。もちろん経験があれば小説になるかと言えばそこには溝があり、とても遠いものだと思います。

今回の三作はそれぞれの体験とか、人生にどのように向き合っているか、そのベクトルがしっかりしていたと感じました。

真っさらの新人賞でこれだけの成果はすばらしいと思います。この感覚、三作を出せたと言うことを次につなげることが必要だと思います。」と講評されました。


川上未映子さんHP.jpg

お三人は、いずれも当代きっての人気作家の皆さん。その選考委員の方々に今回の受賞作品が高く評価されたことは、大変嬉しいことであり、この林芙美子文学賞が、(年齢を問わず?)新人作家の登竜門としてさらに大きな成果を上げて行ってほしいものです。

表彰式の後は、リニューアルなった林芙美子記念室のテープカットでした。スペースが広くなり、展示内容も充実しています。ぜひ門司港レトロ地区にお出かけ下さい。

タイトルとURLをコピーしました