政府に無批判なメディアで良いか?

今日のY新聞の社説を読んでいて少々驚きました。先の郵政国会の解散劇で廃案となった「障害者自立支援法案」について「保護から自立への大きな転換だ」として、「これまでは障害者を保護することに重点が置かれてきた」「法案は、障害者が自立できるよう支援するための制度を整え、必要な財政基盤の強化を図ろうとしている。今国会で成立させるべきだ。」というのです。
 一体、いつのことを言ってるんでしょうね? これまでのお役所による措置制度から、障害者が、自分で利用したいサービスを選んで契約できる支援費制度に変わったのは平成15年4月のこと。 それよりも2年も前に、すでに厚生労働省は「ノーマライゼーションの理念を実現するため」支援費制度の意義について述べています。(その時でさえ障害者の「保護」とは言ってない!)
 今回の「自立支援法案」が、障害者のあたりまえの地域生活を保障するための「大きな転換だ」というほど画期的意義をもった法律だなんて、当事者も誰も思っていないのではないでしょうか。

  財政対策としての「自立支援法案」

 実は、先の支援費制度によってサービス需要が拡大し、財源不足となった状況に危機感を抱いた政府が、これを打開するために介護保険制度との統合を睨んだもののすぐには実現出来ない。そこで代わりに出てきたのが「自立支援法案」。 支援費制度が所得に応じた「応能負担」であったのに対し、こちらはサービスの量に応じた「応益負担」制度であることが、典型的にその趣旨を示しています。
また「必要な財源を義務的に確保する」といいつつ、国の支出金はちゃんと上限をもうけることが出来る仕組みになっています。
要は財政対策なんですね。

 民主党を非難して政府を擁護

 社説では、正式な対案を出さないとして民主党の「姿勢は極めて疑問だ」と、予想通り野党民主党を非難しています。
 大半の障害者が、極めて低額の障害年金だけ、もしくは生活保護で暮らしている現状で、上限があるとはいえサービス量に応じた自己負担を求められると「生活がやっていけない」と悲痛な声をあげ、法案の撤回を求めていることを、どれほど真剣に受け止めて、論説者はこれを書いているのでしょう。
 障害当事者の法案への厳しい批判を受け止めて、政府案を批判的に検討指摘し、日本の障害福祉制度を前進させることこそ、社会の公器たる主要メディアの果たす役割ではないかと私は思います。
 政府案を無批判に擁護し、民主党を非難して法案への真摯な批判の声を封じるのであれば、それは単なる「御用新聞」でしかありません。そんなメディアの姿勢で、本当に良いのでしょうか?

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