第9回林芙美子文学賞-大賞に屋敷葉さん『いっそ幻聴が聞けたら』

北九州市ゆかりの作家・林芙美子さんの名を冠した文学賞『林芙美子文学賞』は、新たな文学の才能が世にはばたくきっかけになることを期待して、2014年に創設されました。
第9回目の今年は2月25日、4年ぶりに対面での授賞式が行われ「いっそ幻聴が聞けたら」で大賞を受賞された屋敷葉さんをはじめ、選者の井上荒野さん、角田光代さん、川上未映子さんも来北されました。

第9回林芙美子文学賞
受賞作品は「いっそ幻聴が聞けたら」

受賞式では屋敷葉さんが「いつも小説に逃げられ続け、主人公に振り回されて、書くことははなんて難しいことかと考えている私が、こんな素晴らしい賞を頂けるとは思ってもみませんでした。これを機に、一層がんばって書き続けていきたいです」と謝辞と抱負を述べておられました。
2016年に本賞の第二回大賞を受賞された高山羽根子さんが、その後、2020年『首里の馬』で第163回芥川賞を受賞されるなど、北九州市の林芙美子文学賞は、新進気鋭の文学者の登竜門としての評価を高め始めています。屋敷葉さんは28歳。今後のご活躍を心よりお祈りいたします。

お三人の選者講評によれば、受賞作の主人公は、終始不機嫌で、露悪的、利己的。ユーモアも入れて、だめすぎる女の日常を描きながら「だめなまま、救いのないまま書ききった」(井上荒野さん)ところが、小説として評価されたとのこと。
川上未映子さんは会場で「それでいて読んだ後、何か残るんですよね。小説だから、何を書いてはいけないというのはないんです」ともおっしゃっていました。
会場で配られた小冊子に掲載された受賞作を私も読んでみました。
ユーモアを交えて一人称で語りながら描かれた、なるほど最後までダメな女主人公の姿に、いっそ清々しさを感じてしまいました。

ところで、本賞の創設にかかわる林芙美子の代表作「放浪記」には「下関の町で生まれた」と書いてあることから、いまでも林芙美子の下関生まれ説が信じられている場合があるようです。
しかし今では林芙美子さんは北九州市門司区小森江の生まれであることが分かっています。
(西日本シティ銀行「ふるさと歴史シリーズ・北九州に強くなろうNO .2林芙美子の実説」ご参照ください。(https://www.ncbank.co.jp/corporate/chiiki_shakaikoken/furusato_rekishi/kitakyushu/002/01.html )
生誕地近くの小森江公園内には『林芙美子生誕地記念文学碑』が建てられているほか、門司港レトロ地区の旧門司三井倶楽部2階には『林芙美子資料室』も開設されています。
北九州市立文学館でも常設展示がなされています。
https://www.kitakyushucity-bungakukan.jp/

 

 

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