気象の予測技術向上にさらに努力を。ハザードマップ活用法の工夫も。

熊本県から福岡・大分などを中心にした今回の九州豪雨は7月8日現在で、死者57人、心肺停止5人、行方不明者17人という厳しい豪雨災害となってしまいました。心よりお見舞い申し上げ、行方不明者の救出と被災地の一日も早い復旧をお祈りする次第です。
今回の災害報道でも、「記録的な」とか「かつて経験したことのない」という言葉が、頻繁に使われました。「何十年と住んでいて、こんなことはなかった」としても、過去の経験は役に立たず、現実の方が冷酷に歴史を塗り替えていこうとしています。
こうした中、私たちは「想定外の」災害でも、命を守り生きながらえていく知恵を身に着けることの重要性を、改めて噛み締めなければならないのでしょう。

その点で、気象学者の坪木和久名古屋大学宇宙地球環境研究所教授のご指摘は、私には衝撃的な内容でした。
先生はその著書で「大気の中にも河がある。しかもそれはとてつもなく巨大で、幅500キロメートルから1000キロメートルにも達し、長さは数千キロメートルにも及ぶことがある。・・・その河を流れる水の量は毎秒百万トンに及ぶこともある。・・・アマゾン川は長さが6516キロメートル、平均流量は毎秒20万トン程度だそうである。大気の河は、これら世界最大の大河をはるかに上回る水の流れなのである。ただ、大気の河の厄介な点は、時間的、空間的変動が非常に激しいことである。
さらに日本周辺では観測点のほとんどない太平洋や東シナ海などの海上に形成されるため、その実態をとらえ、流れる水の量を正確に知ることはほとんど不可能であることも、防災の観点から大きな問題である。」と指摘されています。(『激甚気象はなぜ起こる』新潮選書)
「そうなんだ!その大気の河が、ちょっと変化しても、ものすごい災害になるはずなんだなあ」

だとすると考えるべきことは二つ。
まず、海洋からやってくる梅雨末期の九州などでの豪雨を予測することは、現状では大変難しいとのことですが、坪木先生も提案されているように、航空機による海洋での観測装置の投下など、もっと国の予算を投入して、少しでも気象観測・予測精度の向上を図ることはできるはずです。
国土交通大臣が、予測精度の向上を気象庁に指示したとの報道もありますので、国においては、ぜひ積極的な取組みを進めてほしいと思います。この点は、仲間の国会議員さんなどを通じて、要望していきたいと思います。

もう一つは、観測精度の向上が図られるまでの間、ハザードマップなどを活用して、想定外の事態を想定して命を守り抜く、防災対策の推進を、みんなで進めて行くことだと思います。
各自治体が作成し公表しているハザードマップは、降雨では1000年に一度の想定であったり、最大級の津波や高潮の想定、それに土砂災害の恐れがあるレッド・イエローゾーンなど、考えられる最も危険な想定を反映して作成されています。
近年、地球規模の気候変動の影響などにより、最も危険な想定に、現実の方が近づいてしまっているとすれば、日ごろからハザードマップに目を通して、どんな危険な場合でも命を守る行動を心がける必要があります。

北九州市では、岩手県で防災教育を推進されていた片田敏孝先生に監修をいただき、自分の責任で命を守るための「「防災ガイドブック」を平成27年度に全戸配布しました。
各区ごとのハザードマップも掲載され、大変よくできた冊子でしたが、如何せん、市民の皆さんにお聞きすると「手元に置いていない」「読んでいない」「どこかに行ってしまってあるはずだけど」「見たことがない」などのお答えを、しばしばお聞きします。
もっとハザードマップを身近なものにする方法はないか、いつも手元に置いたり、家庭や市民センターなどで張り出しておけるように工夫ができないか、みんなで知恵を出しながら具体化を図りたいと思っています。

 

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